寒い冬に限らず、暑い夏でも、季節の変わり目でも風邪をひく事がありますよね。
授乳中のお母さんが風邪をひくと、「たかが風邪」と言えないくらい体力を使います。また、熱が出ていたり体調を崩したりしていても赤ちゃんのお世話は続きます。
この記事では、授乳中のお母さんが風邪で熱を出した時に、授乳しても大丈夫か、もし医療機関を受診するときには何科を受診するのか、風邪をひいたときの対処法などのポイントを説明していきます。
風邪をひいて辛い思いをしているお母さんの参考になればいいな、と思います。
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授乳中の風邪による熱、授乳しても大丈夫?
風邪って何?
風邪というのは、正式には「風邪症候群」といって、咳やのどの痛み、たん、鼻水、鼻づまりなどの上気道炎(じょうきどうえん)の症状が出ます。原因となるのは、主にウイルスです。特にライノウイルスと呼ばれるウイルスは一年中流行期がある風邪を引き起こすウイルスです。
また、熱が出ることもありますが、これは身体がウイルスと戦っている、という証拠なんです。
ちなみに、のどより下の部分を「下気道(かきどう)」といって、気管支や肺も含まれるの。
授乳しても大丈夫?
風邪をひいても、授乳をしても大丈夫です。風邪を引き起こしたウイルスは母乳で出てくる事はありません。
しかし、母乳を作るのにお母さんが気づかないくらい体力を使っています。なので、風邪をひく前と比べると授乳が随分辛く感じると思います。
赤ちゃんの側の利点としては、母乳に含まれる成分に抗体が含まれるので、風邪に対する抵抗力が持続します。ただ、授乳ではお母さんと赤ちゃんが密着するため、お母さんが風邪を移さないように気をつける必要があります。
赤ちゃんのお世話をするときのポイントは後ほど詳しく説明していきます。
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受診するときは何科に受診するの?
実は、家で休んでいるほうが良い場合
それでは、お母さんが風邪をひいて熱やのどの痛みがあって辛いときに医療機関を受診する事があると思います。
まず、風邪の3症状=咳、鼻水、のどの痛みがあり、熱が出ていても、38℃未満の場合は、典型的な「風邪」です。1~2週間くらいかかりますが、自然と良くなることが多いので家で休んでいる事が良いでしょう。
この時点で病院の受診をお勧めしない理由は2つあります。
1つ目は、風邪の原因はウイルスで全てのウイルスに効く薬がない事です。なので、風邪の症状が出たときには対症療法(たいしょうりょうほう)が基本です。
対症療法とは、症状に対して薬を飲んだりする事で、根本的な治療ではありません。例えば、熱に対して解熱剤を飲む、鼻づまりに対してスプレーを使う、といったことです。
また、医療機関を受診しても抗生物質を処方されない事もありますが、これは原因となるウイルスには抗生物質は効かないからです。
2つ目の理由が、病院に受診すると待ち時間が長いことが多いと思います。体調が悪いときに、長い間受診を待つことで体力を使う事、そして、待ち時間に他の患者さんから別のウイルスや菌をもらう可能性があるからです。
受診をしたほうがいい場合と何科を受診するか
受診をしたほうが良い時というのは、風邪ではない病気が潜んでいる可能性があるのでいくつかの指標があります。
- 高熱(38℃以上)がある時
- 咳が3週間以上続く時
- ぶり返したとき
- 寒くて震える時
- 飲み物を吐いて飲めない時
1.高熱(38℃以上)がある時
まず、高熱がある時には風邪ではなくインフルエンザの可能性があります。また、インフルエンザは発症してから3~7日はウイルスを出していて赤ちゃんも含むほかの人に移る可能性があるので、マスクをして赤ちゃんや家族を含む他の人に移さないように気をつけましょう。
受診する際には、内科や総合内科、感染症内科を受診しましょう。
2.咳が3週間以上続く時
通常の風邪で出る咳は大体2週間くらいで自然と良くなっていきます。しかし、咳が長引く場合には咳喘息や百日咳などの可能性があります。
特に百日咳は2018年に流行った感染症です。1歳未満の赤ちゃんがかかると命に関わる場合があります。
受診の際には呼吸器科、内科を受診しましょう。
3.ぶり返したとき
風邪をひく事によって、体力や免疫力が落ちてしまいます。そんな状態の身体に細菌が感染してしまう事があります。その例として副鼻腔炎が挙げられます。
受診するときには、内科、頬に痛みがある場合は副鼻腔炎の可能性があるので耳鼻咽喉科(じびいんこうか)を受診しましょう。
4.寒くて震える時
寒くて震えるのと咳がある時には、細菌に感染している可能性があります。また、体力がひどく落ちているときには肺炎になる可能性もあります。
受診は内科や呼吸器科を受診しましょう。
5.飲み物も吐いたりして飲めない時
風邪をひいた時には食べられるものを食べて、体力と免疫力を維持するのが一番です。しかし、食べられなくても十分な水分が摂れていたら、食欲は自然と戻ってくる事が多いです。
しかし、どんな飲み物を飲んでもすぐに吐いてしまう場合には脱水になってしまう可能性があります。
救急を受診しましょう。
インフルエンザのことも前に説明したけど、参考に載せておくわね。
風邪をひいたときのポイント5つ
①赤ちゃんのお世話をするとき
風邪をひいていても授乳を含めた赤ちゃんのお世話は休めません。赤ちゃんは授乳から免疫をもらっていますが、それでも大人と比べると免疫力は強くありません。
なので、赤ちゃんに風邪を移さないようにする方法を説明します。
- マスクをする
- 手洗い、ハンドサニタイザー(手指用の除菌・消毒剤)を使用する
- 外出先から家に帰ってきたらうがいをする
1.マスクをする
風邪は、ウイルスを含む唾液や鼻水がくしゃみによって飛び散り、それを他の人が吸い込む事によって移ります。授乳やおむつ交換、抱っこをしているときは、赤ちゃんとの距離が近くなり、風邪を移してしまう可能性が高いです。
家の中でもずっとマスクをしているのは大変かもしれないので、赤ちゃんのお世話をするときにはマスクをするようにしましょう。
ところで、「咳エチケット」をご存知ですか?厚生労働省が咳やくしゃみで感染する感染症に対して啓発しているものです。
引用:厚生労働省 咳エチケット
もともと、これは外出先で気をつけるようにという前提があるのですが、授乳中のお母さんも赤ちゃんには風邪を移したくないと思うので、ぜひ家庭でも気をつけるようにしてみてください。
2.手洗い、ハンドサニタイザーを使用する
特にくしゃみや鼻をかんだ後にはウイルスが手についてしまう事があります。その菌が手についたまま赤ちゃんのお世話をする事で赤ちゃんが感染してしまう可能性があります。
だ液が明らかについている場合は流水で手洗いをしましょう。
また、ハンドサニタイザーは少しの量でしっかり乾かす事で除菌をしてくれる、とても便利なアイテムです。家用にポンプタイプや外出時にかばんにつけられる携帯用にとどこでも使えます。
3.外出先から家に帰ってきたらうがいをする
外出すると、いろんな菌やウイルスと知らず知らずのうちに接しています。風邪は口や鼻を含む上気道への感染なので、悪化しないように、マスクをして外出していたとしてもうがいをする事は有効です。
また、風邪をひく前の人が対象ですが、2005年に発表された「うがいによる上気道炎の予防(英語)」という研究があります。それは、「うがいをしない」、「水でうがい」、「ヨード液(イソジン)でうがい」の3つのグループをランダムにつくり、2ヶ月追跡する、というものでした。
どのグループが一番風邪をひかなかったグループだと思いますか?
その研究では「水でうがい」のグループが一番風邪をひきにくかったという結果でした。
それで、ヨード液を作っている製薬会社の添付文書を読むと以下のように書いてありました。
【効能・効果】
咽頭炎、扁桃炎、口内炎、抜歯創を含む口腔創傷の感染予防、口腔内の消毒
もちろん、「口腔内の消毒」とあるのですが、「風邪の予防」とは書いてないのです。水うがいだとウイルスを洗い流すのに対し、ヨード液は口の中の粘膜を刺激しすぎることで結論として効果がないようです。
実際に、病院でも手術をした患者さんは以前はよくイソジンで手術の傷を消毒していましたが、今では必要でない限りイソジンでの消毒はしないようになっています。
ちなみに、紹介した研究の結論の最後に「上気道炎を起こしても、うがいをすることで気管支への症状を減弱する」とあるので、風邪をひいても水うがいをする事は症状を悪化させないためにも有効だと言えます。
②食事、水分
バランスのよい食事を摂る事が大切です。のどが痛い時には、軟らかい食べやすいものを食べましょう。栄養のあるもので食べられるものを少しでも摂ることで、体力も維持できます。
また、授乳中はもともと水分不足になりやすいです。風邪をひくと、身体を回復させるために水分が必要になるのですが、なかなか十分にとれないこともあります。
また、授乳中のお母さんは赤ちゃんへの母乳を作り出すためにも必要なので、気をつけて水分をこまめに摂るようにしましょう。ポカリスエットやオーエスワンなどの経口補水液を摂るのも、吸収されやすい糖分や塩分などのミネラルなども入っているのでお勧めです。
③睡眠
睡眠は風邪からの回復にはとても大事になってきます。でも、授乳中のお母さんにとっては「いつ睡眠をとればいいの?」と思う事もあるでしょう。
家事を手伝ってもらえるなら、家族にお願いすることも考えましょう。また、搾乳をして冷蔵庫および冷凍庫で母乳を保存して、夜間の授乳は赤ちゃんのお父さんにお願いする事も一つの方法です。
そして、できる限り赤ちゃんが寝ているときに一緒に寝てしまいましょう。
④お薬
授乳中だと薬を飲む事で母乳に影響があるかもしれないと、心配になりますよね。授乳中にも内服できるお薬はあるんです。
薬局でお薬を買うときには、薬剤師さんに「授乳中だけど、飲める薬を探している」と聞けば、どんな薬なら内服できるのか教えてくれます。また、国立成育医療研究センターでは、「授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと」と授乳中のお母さんにお薬の情報を提供しています。
⑤また風邪にかからないように、できる事
「赤ちゃんのお世話をするとき」でも紹介しましたが、外出先から帰ってきたときには手洗い、水でのうがいをすることです。また、外出するときにもマスクを着用する事、ウイルスをもらわないように出来るだけ人ごみを避ける、外出先でも食べる前にはハンドサニタイザーを使用する事で、口から入ってくるウイルスをできるだけ少なくしましょう。
また、抗菌力のある食品(はちみつなど)を摂る事も有効です。
とりあえず、ハンドサニタイザーと経口補水液を注文して、軽く食べて、寝ます。
ハルカさん、たくさんの説明ありがとう。
まとめ
- 風邪というのは「風邪症候群」が正式名称で、咳、くしゃみ、のどの痛み、鼻水など上気道の感染のこと。
- 風邪をひいても授乳は可能。
- 風邪の症状が咳、のどの痛み、鼻水などの典型的な症状であれば、家で休んでいるほうが良い。
- 高熱(38.0℃以上)、咳が3週間以上続く、風邪をぶり返す、寒気がする、水も受け付けない時には受診をする。
- 赤ちゃんのお世話をするときには、マスク、手洗いもしくはハンドサニタイザーをつかう、うがいをする。
- 食事、睡眠を十分とる。
- お薬は授乳中でも内服できるものがあるので、薬局で薬剤師さんに相談する。
- 風邪が良くなっても再度かからないように気をつける。
風邪は季節に関係なくひいてしまいます。私も先日、授乳中で風邪をひいてしまいました。生後数ヶ月の子どもに移しやしないだろうか、と内心ひやひやしながら授乳をしましたが、子どもは私から風邪をもらうことなく、元気に成長しています。
くしゃみ、鼻水、のどの痛みに加えて、歳のせいなのか身体もだるくて大変でしたが、できるだけ栄養のあるものを食べ、できるだけ寝て、はちみつを舐めながら体調を回復させました。
これを読んでいる授乳中で風邪をひいているお母さん、少し身体を休めて早く良くなることを願っています!