乾燥するこの季節、気を付けていても風邪を引いてしまったり、喉が痛くなったりしてしまいますよね。特に小さい子供がいる家庭では、幼稚園や保育園、学校で風邪をもらってきてしまい、家族にも移ってしまうと言うことは良くあることです。
ですが、「ただの風邪だから」といっても油断は禁物。特に咳が長引く場合、もしかすると風邪ではなくマイコプラズマ肺炎に感染している可能性があります。
今回は、マイコプラズマ肺炎の症状や対応方法について、一緒に勉強していきましょう。
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放っておくとこんなに危険!マイコプラズマ感染症
マイコプラズマ「肺炎」のお話に行く前に、ちょっとだけマイコプラズマ「感染症」のお話を。
マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという細菌に感染することで発症する、マイコプラズマ感染症のひとつです。マイコプラズマ感染症は、長引く咳を伴う呼吸器の感染症です。
マイコプラズマ感染症は、重症化すると肺炎だけで無く、心筋炎や髄膜炎、腎炎になるケースがあります。特に肺炎は風邪と見分けがつかない事が多く、注意が必要です。
- 心筋炎(しんきんえん)
心臓の筋肉(心筋)が炎症を起こしてしまい、心臓の機能が低下したり不整脈を起こす症状です。患者の命に関わる病気で、一命は取り留めても後遺症が残る可能性があります。
- 髄膜炎(ずいまくえん)
脳や脊髄を保護している髄膜や髄液が炎症を起こしてしまう症状です。後遺症が残ってしまったり、最悪の場合は死に至る病気です。
- 腎炎(じんえん)
腎臓が炎症を起こすことで機能が低下してしまい、血尿や高血圧症などを引き起こします。また、尿細管壊死(尿の管が壊死してしまうこと)を引き起こす可能性があります。
実は、マイコプラズマ細菌自体はそんなに強いわけではないのです。きちんと症状や対処方について理解していれば、適切な治療を受けることができますので重傷化を防ぐことができます。
では、次にマイコプラズマ肺炎の特徴について見ていきましょう。
マイコプラズマ肺炎って、風邪とどう違うの?
マイコプラズマ肺炎とは?
鼻や口からマイコプラズマという細菌が入り、肺に炎症が起きてしまう症状です。マイコプラズマ感染者の10人に1人が肺炎になると言われています。4年に1度流行する傾向にあるため「オリンピック病」とも呼ばれていました。
発熱や咳など風邪と似た症状が出るので、見分けるのが非常に難しいと言われています。6歳以上の小児肺炎のうち、40~50%はマイコプラズマ細菌が原因です。子供や若い人がかかりやすい細菌ですが、大人も感染することがあります。
マイコプラズマ肺炎を発症した場合、意外にも子供より大人の方が重症化しやすいと言われています。症状が風邪と似ていることから、風邪と自己判断し治療が遅れてしまうことも原因の一つです。
また、免疫が高いほどマイコプラズマ肺炎を引き起きしやすい、という衝撃的な事実も明らかになっています。
こちらは、大人のマイコプラズマ肺炎の恐ろしさを再現したショートドラマですので、一度ご覧になってみてください。↓
[youtube https://www.youtube.com/watch?v=XmB78MqREao]
大人の方が症状がひどくなりやすい病気は、実はこれだけではありません。こちらの記事↓でご紹介していますので、一度ご覧になってみてください。
マイコプラズマ肺炎と風邪の違いは?
風邪を引くとすぐに症状が出てきますが、マイコプラズマには潜伏期間があり、感染した部位の免疫反応を過剰にさせ、じわじわと症状が現れます。そして、結果的に肺炎などの症状を引き起こすのです。
風邪であれば2週間程度で咳が落ち着くことが多いですが、気道が炎症を起こして弱っていると、冷たい空気を吸い込んだときや、乾燥など、ちょっとした刺激で咳の症状が長引いてしまう事があります。
3週間たっても咳が治らないようであれば、病院に連れて行きましょう。マイコプラズマは周囲に感染する病気ですので、疑わしい場合は早めに受診することが大切です。
なぜ咳が出るの?
咳は、空気の通り道である気道にウイルスやほこりなどの異物が侵入した際に、異物を排除しようとして反射的に起こる反応です。
しかし、咳の原因となる病気や細菌は様々です。咳は、体の異常事態を知らせるサインでもあります。咳が出始めたら「放っておけば大丈夫」と考えるのでは無く、きちんと様子を見てあげてくださいね。
咳の種類
実は、咳にも種類があるんです。種類別に特徴を見てみましょう。
乾性咳嗽(かんせいがいそう)
「コン、コン」といった乾いた感じの咳です。
湿性咳嗽(しっせいがいそう)
「ゴホン、ゴホン」という、痰(たん)が絡んで湿った感じの咳です。
犬吠様咳嗽(けんぼうようがいそう)
「ケン、ケン」という、犬の鳴き声のような咳もあります。これは呼吸困難などを引き起こす重度の病気である可能性がありますので注意が必要です。後ほど改めてご紹介します! (※「クループ症候群」参照)
咳が続く期間の区別?!咳の続く期間も重要です。3週間未満で落ち着く咳(急性の咳)、 3~8週間続く咳(遷延性の咳)、 8週間以上続く長引く咳(慢性の咳)、として区別しています。
お子さんの咳が続く期間や、咳の様子を知ることは、その背後に潜む病気を見つける重要な手がかりとなるのです。
引用:シオノギ製薬HP
マイコプラズマ感染症の治療法について
マイコプラズマの検査方法
現在主流となっているマイコプラズマ感染症の検査方法は、
- LAMP法と呼ばれる喉から菌を採取する方法
- 保険適用内のため、検査費用自体は900円程度と大変お手軽
- 検査結果は大体3~6日程度で出てくる
となっています。
しかし、マイコプラズマに感染していても、陰性という反応が出てしまうこともあります。
マイコプラズマはゆっくりと増殖するので、陽性反応が出にくいのです。そのため、感染が疑われた時点で専用の抗菌薬を処方してくれるお医者さんもいます。
マイコプラズマの治療方法
上で書いたように、マイコプラズマ細菌自体は強い菌ではありませんので、気がつくと自然と治っていたというケースもあります。
ただし、咳が長引く場合は肺炎になる可能性がありますので、マクロライド系の抗菌薬が処方される場合が多いです。
しかし、最近は抗菌薬に耐性を持つマイコプラズマ細菌が増えてきており、マクロライド系の抗菌薬が効きにくくなってきているのです。マイコプラズマ感染者の7~8割が、耐性のある菌に感染していると実証されています。
マクロライド系の抗菌薬を5日程度服用しても効果が無い場合は、ほかの種類の抗菌薬に切り替えて服用することになります。
咳の中には、止めてはいけない咳があります。もともと咳は体内の悪い物を追い出そうとする人間の防御反応なのですから、むやみに咳止めは飲まない方が良いです。場合によっては痰を出すことができなくて息苦しくなってしまう事もあります。
登園、登校できるのはいつから?
実は、マイコプラズマ感染症の場合、明確に「いつからOK」とは決められていないのです。たいていの場合は熱が下がり、咳がある程度落ち着けば登園、登校させて大丈夫でしょう。
ですが、マイコプラズマ肺炎になってしまった場合は、登園、登校できるようになってからも1週間は運動をお休みした方が良いと言われています。
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有効な予防策
予防には、手洗いうがいが一番
マイコプラズマには、集団生活の中や家族間で感染することがほとんどです。マイコプラズマ細菌を持った人の唾などによる飛沫感染や、感染した人と一緒に過ごすことにより感染してしまう空気感染(接触感染)によって人から人へと移っていきます。
予防接種などのワクチンがないので、日頃から手洗い、うがいを徹底し、できればマスクをした方が良いでしょう。また、タオルや食器は共有しないで、ひとりひとり別々の物を使う様にしてくださいね。
それでも子供が咳をし始めたら
- お子さん本人はもちろん家族もマスクをするようにしてください。
- マイコプラズマは触っただけでも感染するので、家族も手洗いうがいをこまめにしてください。
- マイコプラズマは空気を通しても感染します。空気清浄機を付けて綺麗な空気にしましょう。
- 乾燥している空気は細菌にとってはオアシスのようなもの。加湿器も併用して、適度な湿度を保ちましょう。
- 咳をしていると喉がガサガサして辛くなってしまうので、こまめに水分補給をさせるよう心がけてください。
- 横になっているとどうしても咳が止まらなくなってしまう場合は、上半身を起こしてあげると気管や肺が楽になって落ち着きますよ。この姿勢でいれば、痰も出やすくなります。
- 咳が辛そうな場合は、胸元にヴェポラップを塗ってあげるのも良いでしょう。大人にも使えますので、1つあればもしもの時に役に立ちます。足の裏に塗っても咳がおさまるそうなので、気になる方は試してみてくださいね。
こちらの記事でも夜間に子供の咳が止まらないときの原因と対処方をご紹介していますので、是非ご参照くださいね。
そして、3週間ほどたっても咳が治らない場合は、直ちにお近くの病院で見てもらってください。ただの風邪では無く、マイコプラズマ肺炎になる可能性がありますよ。
その咳、別の病気かも?
ちなみに長引く咳の原因は、マイコプラズマ肺炎 (マイコプラズマ感染症) 以外にも様々なものがあります。咳を引き起こす原因は別のところにあるかもしれませんよ。
喘息(ぜんそく)
咳や痰が出てくるだけで無く、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)という症状が出てきます。人によっては胸の痛みもあります。治療せず放置しておくとどんどん症状が重くなってしまいますので、早めに受診しましょう。
急性気管支炎(きゅうせいきかんしえん)
気管支が炎症を起こしてしまい、呼吸をするだけで咳が出てしまったり、喉から血の味がすることがあります。最初は乾いた咳なのですが、だんだん痰がからんだ湿った咳に変わっていきます。基本は痰を出してあげるお薬で様子を見ます。
百日咳(ひゃくにちせき)
細菌はワクチンが充実してきているので感染者数は少ないのですが、その衝撃的な名前の通り、長期間にわたって咳が続くのが特徴です。乳児のうちは予防接種のおかげで免疫ができている場合が多いのですが、大人になって免疫が切れた頃に感染する人もいるようです。
副鼻腔炎(ふくびくうえん)
風邪を引いて鼻がつまったり、黄緑色っぽい鼻水が出る場合は副鼻腔炎の可能性があります。風邪と副鼻腔炎をこじらせると咳もひどくなる事があり、特に横になったときに咳がひどくなります。副鼻腔に膿がたまっていると、膿が喉元を刺激して咳が出るのです。
クループ症候群
「ケン、ケン」という犬の鳴き声のような咳 (犬吠様咳嗽 (けんぼうようがいそう) ※上方の「咳の種類」参照) が特徴です。
喉の奥で炎症が起き腫れてしまい、ひどい場合には呼吸困難を引き起こす可能性があります。さらには入院が必要な場合もありますので、このような咳が出たら早めに受診しましょう。
まとめ
- マイコプラズマ感染症は、肺炎だけで無く心筋炎や髄膜炎、腎炎と言った重い症状の病気を引き起こす事がある。中でも肺炎は、マイコプラズマ感染者の10人に1人がなると言われている。
- マイコプラズマ感染症は風邪と区別しにくい。ただし、咳が3週間以上続く場合はマイコプラズマに感染している可能性があるので、早めに受診する。
- 咳は、悪い物を体内から追い出す為の防衛本能。むやみに咳止め薬を服用せず、お医者さんに相談しよう
- マイコプラズマ肺炎は、大人の方がこじらせてしまう傾向にある。自己判断せず慎重に様子を見ることが大事
- こまめな手洗いうがい、マスク着用を徹底し、感染を予防しよう
気を付けていても、保育園や幼稚園、学校に通っているとなかなか予防し切れない事がありますよね。マイコプラズマのように感染力の高い細菌については、たくさんの親御さんに理解頂き、自分の子供が咳をしていればマスクをさせるなど、お互いが気を付けなくてはなりません。
また、子供から大人に感染した場合は症状がひどくなりやすく、更に感染を拡大させる恐れがあるので要注意です。特に子供の看病をしていたらお母さんが感染してしまい、更にお父さんにも感染してしまって、会社に細菌をまき散らしてくる、なんて言うこともあり得るのです。
家族みんなで予防対策をして、今シーズンも元気に乗り切りましょう!