ASD (Autistic Spectrum Disorder) ・・・自閉症スペクトラム障害
最近テレビや書籍などでよく目にする、発達障害の一つです。
その名前の漢字から「自分の殻に閉じこもっている人」や、何かの原因によって「『後天的に』心を閉ざしてしまった人」と勘違いされる事がいまだに多いようですが、実はそうではないのです。
自閉症は先天的な脳の機能発達障害なのです。
今回は、よく聞く名前の障害なのに今一つ分かりにくい、自閉症の子供の特徴や接し方について少しお話したいと思います。
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先輩ママからのメッセージ
https://www.youtube.com/watch?v=5Z22XxHyIx8&t=100s
自閉症とは?
どんな障害?
一般的に先天的な脳の機能障害と言われています。自閉症の特徴はたいてい3歳までに現れます。
その名前から、「自分の殻にこもる」心の病気と勘違いする方もまだ多いようですが、情緒障害ではありません。
まして、親の育て方や子供を取り巻く環境などが原因でおこるものではありません。
脳内の情報処理の仕方に障害があるため、見たり、聞いたり、感じたことが、健常者と同じように理解することが出来ないのです。
そのため、人と係ること、例えば、自分の気持ちを伝えたり、相手の事を考えて行動することがとても困難なのです。
文部科学省の定義によると、自閉症は3歳くらいまでに現れ
- 他人との社会的関係の形成の困難さ
- 言葉の発達の遅れ
- 興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害
となっています。
自閉症スペクトラムとは、自閉症の特徴である「社会性の問題」「言語やコミュニケーションの問題」「想像力と創造性の問題(強いこだわり)」は共通しているが、重度の知的障害を併せ持つ人から、知的障害のない IQが通常よりも高い人まで、と幅広い様々な特徴や個性を連続的にとらえ (ここからここまでが自閉症と明確に境界線を引くことが出来ない)、ひとつの疾患にまとめた概念です。
※スペクトラム (Spectrum) ⇒ 「分布」、「範囲」、「領域」、「連続体」といった意味。
- 知的障害があって、「社会性」「コミュニケーション」「こだわり」の3要素に問題が見られるのが【自閉症】
- 知的障害が無くて、3要素に問題が見られるのが【高機能自閉症】
- 知的障害が無く、3要素に問題が見られるが、言葉の発達には遅れが見られないのが【アスペルガー症候群】
になるんだよ。
アインシュタインや織田信長がそうだったって!
自閉症は生涯にわたる障害で、今の医学では残念ながら完治することはできませんが、育て方や教育により、その症状を改善することが可能です。
出生率
1960年~1970年代の調査によると、自閉症の発症頻度は1万人に5人の割合で出現する稀な障害でした。
しかし、1990年代から自閉症率は世界中で急劇に増加しています。それはこの疾患が世の中に認知されるにしたがって、それまでは診断されなかった軽度のものも含まれる様になったことも理由と考えられます。
2017年のWHO(世界保健機関)の発表では、世界全体で160人に1人の子供が自閉症と診断されています。
また国別での割合は下の表をご覧ください。
国別発症頻度の統計 | ||
---|---|---|
COUNTRY | 10,000人中 | 割合 |
USA | 168 | 60人に1人 |
Japan | 161 | 62人に1人 |
Canada | 152 | 66人に1人 |
United Kingdom | 100 | 100人に1人 |
Ireland | 100 | 100人に1人 |
Denmark | 68.5 | 146人に1人 |
Australia | 66.6 | 150人に1人 |
Hong Kong | 49 | 204人に1人 |
表内データ引用: World Atlas
原因は?
脳の中枢神経系の機能障害・機能不全であることがわかっています。原因として考えられることがいくつもありますが、未だ断定はされていません。
- 多くの遺伝的要因が関与している
- 健康な人ももち得る微妙な遺伝子の変化がいくつか偶然に集まってしまったことが自閉症の発病にかかわっている
- 父親の高齢説
- 5%程度の症例では、染色体異常が見られる
- 母体の環境化学物質摂取による可能性
自閉症児の主な特徴
もし、お子さんの発達に心配や不安を感じたら、一人で悩まないで、まずは自治体の発達相談窓口に気軽に相談してみるのがいいね。
発達障害者支援センターや保健センターでも相談に応じてもらえるって。
【感覚】
- 赤ちゃんの頃から抱っこされることを嫌がる(のけぞったり、身をよじったり)
- 手をつなぐのを嫌がる
- 締め付け間のある服を嫌がる
- 靴下を履くことを嫌がる
- すぐに手を洗いたがる
- 名前を呼んでも振り向かない
- 少しの光でもまぶしがる
- ざわざわしたところ、人が多いところなどに行くと耳をふさぐ
- 感覚の過敏さと鈍さがある
【運動・動作】
- 視線が合いにくい(アイコンタクトが殆どない)
- つま先立ちで歩く
- その場でくるくる回ることを好む
- ゴロゴロと床に寝転ぶ
- 顔の前で手をひらひらさせる
【コミュニケーション】
- バイバイをするのに手のひらを自分に向ける
- 自分の欲しいものを取るときに他の人の手をつかんでものを取ってもらおうとする(クレーン現象)
- 興味を持ったものに対しての指差しがない(指差しであれ、これと伝える事がない)
- 状況に応じた声の大きさがわからない
- 相手の言った言葉をそのまま繰り返す(オウム返しの答え)
【行動・興味】
- 興味の対象物に偏り、執着がある
- ごっこ遊びをしない
- 強い偏食(ある特定の物しか食べない)
下記の外部リンクは、自閉的傾向のあるお子さんによく見られる特徴をリストアップしてあり、もしお子さんの発達に不安を感じている方は参考になるかと思います。
しかし、当てはまる項目が多いからと言って自閉症と断定するものではありません。その点はご理解ください。
外部リンク:Kids hug(キッズハグ)
得意な事・苦手な事
脳機能の発達のアンバランスさが原因で、得意なことと苦手なこととの差が大きく出ます。
- 耳から入る言葉での情報処理は苦手だけど、絵や写真など視覚から得た情報を処理することは得意
- 普段は落ち着きはないのだけど、興味のあることはずっと続けていられる
など、子供をよく観察し子供の得意な事をどんどん見つけて、どんどん褒めてあげてください。
褒められることが嬉しいのはどんな子供も一緒。
好きなことをして褒められたり、うまくいった嬉しい経験が積み重なると自然と自己肯定感も高まり、それが好ましい行動パターンへと繋がります。
表内の項目引用:ハートクリニック (発達障害について)
自閉症の子供とどう接したらいいの?
自閉症児には特有の認知特性があり、他の子どもと見方や感じ方に違いがあります。
ですので、その子供の特徴をよく理解すること、例えばどんなことへのこだわりがあるのか、どのような行動パターンがあるのかを理解した上で、子供の個性を認めてあげてください。
例えば、ジェスチャーや写真なんかを使ってね
自閉症の子供達は先の見通しをイメージすることが難しいから、いつも決まった事と違う出来事が起こるととても不安な気持ちになってパニックを起こしたりするんだよ
自閉症と診断されたら?
治療、療育
治療において最も重要なことは、早期発見と、早期介入です。
現在の医学では自閉症そのものを完治させることは不可能であり、治療の基本は「療育」です。
療育とは、医療と教育の力が合わさり、子ども達の生活をサポートしていくものです。
早期療育によって二次障害(身体、情緒に及ぼす影響ー頭痛・うつ・チック・暴力・暴言、自傷行為等)を予防し、子供のストレスや社会生活における困難を軽減してあげることができるのです。
早期介入は、まだ脳の発達時期である子供たちに適切な療育を行うことによって、脳の新たな分野の活性化を促し、これまで困難に感じていた事や苦手としていた事に対して、適切な行動がとれるようにトレーニングすることが可能なのです。
療育には次のようなものなどがあります。
- PT (Physical Therapy = 理学療法)
– 医師の診断をもとに、基本的な身体の動かし方をみていくことから始める
– 座る、立つ、起き上がるなど基本的な動作の発達を促したり、姿勢の安定に向けて運動療法を行う
- OT (Occupational Therapy = 作業療法)
– プレイセラピーや、遊びの中で、身体全体を上手に使ったり、手先の不器用さを改善するためにトレーニング
–感覚統合療法アプローチ
- ST (Speech-Language-Hearing Therapy = 言語療法)
– 言葉を話したり聞いたりする機能に障害がある人に対して、日常生活を円滑に送るために行われるセラピー
– 本人が今持っているコミュニケーション方法から、さらに生活がしやすくなるための練習をする
– 発話が難しい子には音声言語だけでなく、サインや絵カードでのやり取り、文字の学習などが選択されることもある
- SST: ソーシャルスキルトレーニング
– 人が社会でほかの人と関わりながら生きていくために必要なスキルを身につけるトレーニング
– 発達障害の改善効果も期待できると注目されている
- ABA:Applied Behavior Analysis 応用行動分析
- TEACCHプログラム
- PECS: 絵カード交換式コミュニケーションシステム
薬物療法
自閉症の根本的治療や症状緩和のための医薬品は、存在しません。
ただし、
- 著しい適応障害がある場合
- 自己や他者に身体的危険が及ぶ可能性が高い場合
- 併発しやすい症状、例えば
- 睡眠障害
- 不注意
- 多動性
- 衝動性
- 自傷行為
- 興奮
- 攻撃性
などによって生活に支障をきたしている場合
その併発した症状に合わせた薬物治療が検討されることがあります。
ラビット発達臨床研究所のドクター平岩は、発達障害を持つ子供の子育てアドバイスとしてこうおっしゃっています。
子どもの時間は
たった20年
そこでできることをしないと
50年それを背負って生きる
その他の治療として期待されるもの
睡眠の質を上げる
多くの自閉症研究で、自閉症の症状を持つ子供の多くが睡眠障害を抱えていると報告されています。
その数、発達障害を持たない子供の約2倍以上だとか!
自閉症の症状は、乳児期の睡眠リズムの異常などによって乳児期後期にはすでにその兆候が見られている場合もあるそうです。
睡眠障害の理由の1つに、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌量が障害のない人よりも少ないと言われています。
もし、心配に思われる兆候があるのなら、早期に受診され、そのお子さんに合わせた適切な指導を受けることによって、社会性、コミュニケーション能力の改善が期待できるそうです。
GF / CF (グルテンフリー/カゼインフリー)
それが自閉症に関係あるの?
で、うまく分解できなかった代謝物が、問題のある腸の部分から漏れて、血流に入って脳へと運ばれ、何らかの形で脳の機能を妨害している、という理論からだよ。
最新の発達障害の研究では「腸」と「脳」の関係性に注目が集まっています。
グルテンは腸の壁を傷つけ、腸の問題を増やすそうです。
自閉症を持つ子どもの多くが、慢性的な下痢や便秘などの腸の問題を抱えていると言われていますが、GF/CFの食事療法で腸内環境を整えることによって、問題行動の減少や改善が報告されています。
※ちなみに、カゼイン → 乳製品に含まれるたんぱく質の一種です。
固まる性質があります。例えばホットミルクを作った時、表面に白い膜ができますがあれがカゼインです。
チーズやヨーグルトもカゼインの固まる性質を利用して作られています。
サプリメント
GFと共に多くの子供達に行われているのがサプリメントの摂取。
特に海外では、有効性の報告が数多くあり、欠乏が想定される場合には、積極的にサプリメントの投与を行っているご家庭が多いようです。
発達障害に良いとされるサプリメントに「マグネシウム」「オメガ3」「B6」「亜鉛」等がありますが、子供の症状により様々です。自己判断ではなく、専門医に相談することをお勧めします。
オキシトシン
オキシトシンは脳から分泌されるホルモンです。別名【幸せホルモン】とも言われています。
2005年にスイスのチューリッヒ大学神経経済学研究所チームがオキシトシンの投与によって、他人への信頼が増すという衝撃的な研究発表を出しました。
それ以来、このオキシトシンにより、自閉症者の対人コミュニケーション障害を改善出来ないかとの研究が進んでいます。
ニューロフィードバック
簡単に言っちゃうと「脳をトレーニングすること」だよ。
ニューロフィードバックとは脳波をモニターしながら、動画やゲームを使って正しい脳波の使い方を脳にトレーニングし、症状の改善を目指すセラピーです。
発達障害だけでなく、睡眠障害、認知症の改善や音楽、スポーツのパフォーマンス向上に効果があると言われています。
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自閉症関連本
自閉症児を持つ親にとってはバイブル的存在です。
分かっていること・分かっていない事
アメリカの遺伝学者であるドクターウェンディ・チャンによる自閉症に関してのスピーチです。
自閉症の原因、そして早期介入が自閉症児の成長にとっていかに重要かを伝えています。
※日本語の字幕設定をしていない方は、画面下方にある「設定」→「字幕」で「日本語」を選択すると、日本語字幕付きで見られます。
まとめ
- 自閉症は先天性の脳の機能発達障害である
- 自閉症の基本的特徴はおおよそ3歳位までに現れる
- 自閉症の特徴は主に次の3要素に現れる
☆社会性(対人関係)の困難
☆コミュニケーション(話すこと・聞くこと・相手の表情を読む・空気を読むなど)の困難
☆イマジネーション(目に見えないものを想像する)の困難 - 自閉症は生涯にわたる障害
- 自閉症の治療法の基本は療育と環境調整
- 療育で最も重要なことは早期介入・早期療育
- 療育では発達を促す働きかけを行い、適応行動を増やし、異常行動の要因をよく分析・整理し、異常行動の減弱に取り組むことが必要
- 同じ診断でも症状は一人ひとり違うので、療育は一人ひとりの発達に沿ったプログラムが必要
- 自閉症スペクトラム者への支援は、成長に合わせて、それぞれのライフステージに応じた支援を途切れることなく継続することが重要
子育てや子供の成長に不安や課題感が大きい場合などは、決して一人で悩まず、まずは無料で相談できる地域の専門機関に連絡してみて下さい。
早期発見・早期介入が自閉症の子供たちのその後の成長に大きく影響します。
そして、自閉症のある子ども達が地域で充実した生活を送るためには、家族は勿論ですが、学校や地域の関係機関の支援は欠かせません。
ASDの子供たちが障害を持たない子供たちと同じように元気で笑顔で成長できるように、そしていつか大人になったときに個々のニーズに合った、適切な支援を受けながら社会で自立していけるように、自閉症スペクトラム者を取り巻く地域社会が、自閉症特有の言動を「自閉症の世界」と理解を示し、心のバリアフリーがごく普通の世の中になるといいですね。